2001年

4月5月のご挨拶


 『干刈あがた資料館』の更新が滞っている間に、季節はすっかり初夏。

 桜満開の1990年3月末、久しぶりに集ったいつもの仲間の前にすっかり体重を落として一回り小さくなった干刈さんがいました。今年のお正月Vサインでご挨拶したあの写真を撮った時からわずか2ヶ月でした。 4月9日、代々木の病院のベッドに干刈さんを残して言いようのない不安と後悔にうつむいて帰ってきた路地にはひらひらと残り少ない桜の花びらが散っていました。 あの日の心細げな彼女と若葉の中に隠れるように咲くなごりの花が重なってしまいます。

 そして入院して3週間の5月4日、あいつぐ検査と準備を経て胃を5分の4摘出する大手術に臨みました。 「あーあ切られて捨てられてしまうなんて。私の胃、よーく観ておいてね」と言いながら小さく手を振って。 病院の隣の大きな森の木々は若葉が萌え出でて5月の風に揺れていましたが、空っぽの彼女のベッドの枕元にはお見舞いにもらった小さな緑の羽根が置いてありました。

 あれから10年、毎年この季節の変わり目、干刈さんの闘病生活のはじまりを思い起こします。 そして今年のこの季節、青梅の宗建寺の干刈さんの側に、一昨年亡くなられてご意志により献体されたお母様のご遺骨がお役目を果たされて納められたと伺いました。 また一つ懐かしい方の大切な思い出が残りました。

 さて緑の風を深呼吸して『干刈あがた資料館』のタイトル、コスモスをクリック。 ゲストブックには干刈あがたの世界を探索して下さるご来館者からのメッセージの数々。とても嬉しいです。 本業に家事に趣味に、そして身内の介護や時に野辺送りにと、優先順位を繰り合わせて作業しております私達スタッフにとってなによりの励みです。
 どうぞこれからもたくさんのご意見をお便りに載せてくださいますようお願い申し上げます。