青梅市中央図書館(2019年7月)
※特別に撮影許可を頂きました


『しずかにわたすこがねのゆびわ』
(1986年1月・福武書店。88年福武文庫 )
六十年代中頃に二十代であった七人の女性の、その後の十五年間を描いた女の物語。結婚・離婚という状況によって変化していく女たちの姿は、それぞれ微妙に異なる。女の物語を女全体の生命のつながりとして捉えた長編小説。


『ワンルーム』
(1985年8月・福武書店。88年福武文庫 )
新築ビルのワンルームマンションに入居した人々の生活を通して、都会の人間模様を描いた新しい都市小説。他に「裸」を収録。


 


『ゆっくり東京女子マラソン』
(1984年8月・福武書店。86年福武文庫 )
小学校四年生のクラスの父母会の役員を引き受けた四人の母と、その子供たちの視点から、地域における人と人とのつながり、家族のつながりを多元的に描いた 中篇小説。団塊の世代の母たちの子育てと自立の物語である表題作の他に「幾何学街の四日月」を収録。文庫本には表題作と「月曜日の兄弟たち」を収録。

 


『ウホッホ探検隊』
(1984年2月・福武書店。85年福武文庫 )
結婚生活15年目の離婚。母と息子たちで始める新しい“母子家庭”模索の物語。演技で母子関係を支える子供たちのウィット溢れる会話に“明るい離婚のかた ち”を描写した表題作の他、「月曜日の兄弟たち」を収録。文庫本には「月曜日の兄弟たち」の代わりに「プラネタリウム」「雲とブラウス」「幾何学街の四日 月」を収録。


『樹下の家族』
(1983年10月・福武書店。86年『樹下の家族/島唄』福武文庫 )
1980年12月ジョン・レノンの死んだ日、37歳の「私」は新宿で60年生まれの沖縄の青年と出会う。不在がちの夫と二人の子供との不安定な生活を、 60年代の青春とオーバーラップさせて描いた表題作の他、「プラネタリウム」「真ん中迷子」「雲とブラウス」を収録。文庫本には「雲とプラネタリウム」の 代わりに『ふりむんコレクション/島唄』の一部を収録。

 


『ふりむんコレクション/島唄』
(1980年5月・自費出版 )
「ふりむん」とは気違い、気のふれた者という意味だが、作者は「静かに心をふるわせている者」「ふらりと日常からはずれてしまう瞬間」としても捉えている。幼年の頃の出来事、父母に対する思いを綴った詩や掌編やエッセイと、沖縄・奄美の島唄に現代語訳をつけた文章を収録。

 

干刈あがたの世界

 


 全集『干刈あがたの世界』 河出書房新社   《 干刈あがた資料館からのお願い 》
 

干刈あがたの世界

私たちが干刈あがたを失ってはや6年が過ぎた。

 干刈あがたは、私たちの前に『樹下の家族』(海燕新人文学賞)で颯爽と登場し、同時代を生きる女性達の魂の同伴者として熱狂をもって迎えられた。
 デビューして世を去るまでの10年間というほんの短い期間に、芸術選奨新人賞を受賞した『ゆっくり東京女子マラソン』をはじめ、野間文芸新人賞の『しずかにわたすこがねのゆびわ』、新聞小説として社会的反響を呼んだ『黄色い髪』など、力作を次々とものにしていった。そして現代家族のゆらぎ、女性の自立、人間同士の新しい絆、教育や老いの問題など、時代の課題を担う希有な女性作家として、一歩一歩誠実に仕事を積み重ねた。
 真面目不器用に映るまでに真摯な干刈あがたの姿勢は、現代に生きる私たちが抱えざるを得ない深い断念や孤独をさえ覗き込み、悲しみや切なさや辛さを超えた明るさに到達している。
 世紀末の混迷深まる今日こそ、間違いなく干刈あがたの作品がその真価を発揮する時である。その仕事は、時代を超えた光を放ち、これからも苦しみ悩みながらも、時代を真剣に生きようとする人々の心の糧となりつづけることだろう。

『干刈あがたの世界』刊行委員会 

 

 
没後七周年記念『干刈あがたの世界』
(第1期6巻)河出書房新社

 第1巻 樹下の家族
  ふりむんコレクション・島唄(1980) 樹下の家族(1983)
*解説 島 田 雅 彦  

 第2巻 ウホッホ探検隊
  ウホッホ探検隊(1984) ゆっくり東京女子マラソン(1984)
*解説 道 浦 母 都 子  

 第3巻 ワンルーム
  ワンルーム(1985)
*解説 小 林 恭 二  

 第4巻 しずかにわたすこがねのゆびわ
  しずかにわたすこがねのゆびわ(1986)
*解説 落 合 恵 子  

 第5巻 ホームパーティ
  ホームパーティ(1987) ビッグフットの大きな靴(1987)
*解説 三 枝 和 子  

 第6巻 黄色い髪
  黄色い髪(1987)
*解説 立 松 和 平  
 
インターネットでのご注文は
アドレス http://www.kawade.co.jp/
 
■全集『干刈あがたの世界』の特色

・自費出版として刊行された『ふりむんコレクション』を始めとする、全小説を収録
・編年体を編集方針として採用し、基本的に第1巻より単行本発行順に作品を収録
・生前親交が厚かった作家など、干刈あがたをこよなく愛する書き手による解説を収録
・詳細な解題を全巻に、最終巻には全貌を掌握するための年譜を収録
・小説世界の魅力を最大限に引き出す、シンプルかつ魅力的な装丁